ぽっちゃり風俗の成り立ち

風俗業界で新たなコンセプトが産まれるきっかけ

風俗業界において新たなコンセプトが産まれるきっかけとは、基本的に後追いである。
大別すると以下の2つにまとめられる。
どこかて見たことのある店名1つ目は「世の中で広く認知されたもの」を真似るケースである。
皆さんも某有名店の名前に酷似している風俗店を目にしたことがある人も多いのではないだろうか。
この場合は本家のサービス内容を風俗のサービス内容に置き換え、本家の認知度を利用して興味を持ってもらいやすくする狙いがある。
例えば、本家が「安さを売り」にしている場合は、必然的に格安サービスを売りにした風俗店が出来上がる訳だ。
分かりやすい例で言うと、某ファーストフード店の「スマイル0円」をモチーフに、風俗のオプションサービスを0円にしますといった感じだ。
後は本家の店名をもじって、性的なワードに置き換えれば出来上がる、なんともお手軽な手法である。
最近で言えば、世界的に大人気となったモンスターを捕まえるアプリなどが、次のターゲットとして可能性が高いのではないだろうか。

AVで人気の定番ジャンル2つ目は「アダルトビデオで人気になったジャンル」である。
この傾向は1980年代から続いており、POSシステムの登場と大きく関係している。
POSシステムとは「販売時点情報管理(Point Of Sales)」のことで、名前の通り購入した時点でのデータで物流を管理する方法である。
POSシステムの導入以前は、レンタルビデオ店の店長による目利きによって入荷商品が決められていた訳だが、POSシステムがあれば過去の販売実績を気軽に確認できる為、売れ筋商品の見定めが効率化されるのだ。
そして1995年にwindow95が登場したことで、パソコンを使ってPOSデータを管理する方法がより一般的となったのである。
こうしてPOSデータを基に今まで気付かなかった流行を漏れなく察知できるようになったおかげで、メーカーサイドでも様々なコンセプトに挑戦し、新たなコンセプトが続々と産まれたのである。
そしてアダルトビデオ業界で実績を残したコンセプトが後追いの形で風俗業界へと取り込まれるようになったのである。

ぽっちゃり風俗店の登場

こうしてレンタルビデオ店に「ぽっちゃりもの」のアダルトビデオが棚に並ぶようになったのは1980年代後半である。
以降は多くのメーカーから様々なアイデアを絞ったぽっちゃりAVが世に出された。
そんな中、風俗業界においては埼玉県にある老舗ファッションヘルス店がぽっちゃり風俗の元祖に近いのではないかと思う。
世の中にはまだインターネットという概念が無く、一世代前のパソコン通信の時代である。
当時はパソコンと言っても何十万円もして、ごく一部の人しか利用できない高級品だった。
そんなまだ広く認知されていない閉ざされた空間では、現在のインターネットよりも無法地帯で、日夜さまざまな情報が飛び交っていた。
そして、その中の一つが優良風俗店に関する情報だったのだ。
今まではごく普通の風俗店に過ぎなかったお店に、突如として多くの客が訪れるようになったのである。

昔から地方の風俗店には決して綺麗とは言えない風俗嬢が勤めていたものだが、たまたま清潔感のある太った女性の多かったこのお店が、ぽっちゃり好きの風俗マニアの間で噂になったのである。
まだまだ高級品であったパソコンを持っているということは、お金に余裕のある男性であり、その点も風俗との相性が良かったと言えるだろう。
噂を聞きつけ埼玉のお店まで通い、その結果をパソコン通信上にアップする。
こうして、その書き込みを見たユーザーが新たな客としてお店を訪れる。
いささか「棚からぼた餅」とも言える展開ではあるが、思わぬ好循環の恩恵を受けたお店は、常連客だけで満員状態が続き、慢性的な女性不足となってしまった為、いつしか風俗情報誌で目にすることが無くなってしまうのである。

求人雑誌をきっかけに、ぽっちゃり風俗が注目を集める

そして、新たにそのお店を目にすることになったのは、情報誌ではなく求人誌だった。
何しろ、毎日のように客は集まるのに、女性の数が足りないからという理由で断らなければならない状況が続いていれば、女の子の数を増やすしかないと考えるのは当然の成り行きと言えるだろう。
ただし、昔の高収入アルバイト誌と言えば、今では破格とも言える広告費である。
何しろ1ページの求人広告を出すのに1か月で100万円単位のお金が掛かる。
現在の求人市場が雑誌からインターネットへと変わったとは言え、現在であれば月に5万円~10万円しか掛からない。
この情報だけでも、当時の求人広告がどれだけ破格であったのかは想像できるだろう。
それだけ高価な求人広告を複数の雑誌で掲載していたのだから、競合店から注目を集めてしまうのも当然だろう。
毎月のように何百万というお金を求人広告に使えるということは、それだけ儲かっているということに他ならない。
こうして求人雑誌をきっかけに、「ぽっちゃり風俗が人気らしい」という情報が全国の風俗店に知れ渡ったのである。
その後に起きることは想像に難くないだろう。
後追いが得意な風俗業界であるから、似たようなお店が全国に乱立することになるのである。
そして、アダルトビデオから遅れること5年、風俗業界においても「ぽっちゃり」をコンセプトにした風俗店が一般的になったのである。